【無自覚系エロ娘って良いよね! ってお話 〜 後編 〜】










 ――カランカラン。

 カウベルの音が来訪者を告げたのは、あくる日の昼過ぎの事であった。それまでいつものように安楽椅子で読書と洒落込んでいた森近霖之助は、しかしそれに気付くと同時に本を閉じ、来訪者へと小さく笑みを向けた。

「やぁ、いらっしゃい……空」

「うにゅ! おはよーおにぃさんッツ!」

 来訪者の名は霊烏路空。その身に強大な神の力を宿した、地獄烏の少女だ。少女、というには些か背が高く、また服の上からでもはっきりと解るほど自己主張の強い肢体を持つ彼女は、しかしそれとは対照的に何処か幼さを感じさせる無邪気な笑みを浮かべて、香霖堂の中へと足を踏み入れる。
 店内には物が雑多に積まれている為、彼女の大きな漆黒の翼が商品にぶつかって崩しやしないか、と霖之助が心配していたのはもう昔。器用に翼を折り畳むお空に、今では霖之助も安心して迎え入れる事が出来た。

「それにしても今日も早いね。……仕事は大丈夫なのかい?」

「うにゅ? おにぃさんに言われた通り、毎日ちゃんと終わらせてから来てるよ?」

「それなら良いんだが」

 お空が初めて香霖堂を訪れたのは少し前の事。その際色々とあって、彼女は霖之助の事をいたく気に入り、それ以来頻繁に来訪するようになったのだ。しかし彼女は、こう見えて多忙な身。地下都市の最下層・灼熱地獄の管理人にして、山の神二人が推し進めているという事業の要らしいのだ。

「……まぁ、もし君が嘘を吐いていたとしても、怒られるのは君なんだけどね」

「う〜、酷いよおにぃさん!」

「はは、済まない。冗談だ」

 ぷくぅ、っと可愛らしく頬を膨らますお空の姿に、思わず霖之助は笑みを零す。その反応が見たくて言ったとはいえ、余り彼女を怒らせ過ぎるのも悪かろう、と霖之助は自身の腿をポンポンと軽く叩いて見せた。
 それを見たお空は、ぷいっと霖之助に背を向けて怒ってますアピールをしたものの……それは五秒と持たなかった。

「にゅへへ〜……」

 先程までの怒りっぷり(というほど怖くはない)は何処へやら、霖之助の膝の上にちょこんと収まったお空は、見ている方も釣られてしまいそうなほど、満面の笑みを浮かべる。そしてそれは霖之助も例外ではなく、見上げるようにして向けられた彼女の笑顔に、彼もまた小さく笑みで返した。

「やれやれ……君と良い魔理沙と良い、そこがそんなに良いのかい?」

「うんッツ! なんて言うか、おにぃさんに守られてるみたいで安心するの」

「ははッ……守られてる、ね」

 よもや自分よりも遥かに強い力の持ち主にそんな事を言われるとは思わず、霖之助は苦笑を零す。尤も、彼女が言いたいのはそういった単純な力の強さではなく、霖之助の持つ父性の事なのだろう。それは、彼自身も何となく解っていた。

「……まぁ、こんな僕の膝で良ければ、好きにしてくれて構ないよ」

 騒がなければね、と注意するのも忘れない。元々霖之助は煩わしいのが苦手だし、それにお空は言動の幼さからつい忘れがちになるが、しかし身体そのものは大人である。余り暴れられてしまうと、重いし痛いしそれに色々とやばいのだ。色々と。

「……むぅ、おにぃさんがなんか失礼な事考えてる気がする」

「気の所為だろう」

 意外な勘の鋭さを発揮する彼女に、しかし霖之助はしれっと惚けて見せる。というよりかは、何が彼女の琴線に触れたのか、本気で解っていないのだろう。
 とはいえ、余りお空の機嫌を損ねるのも気が引けたのだろう。霖之助は近くの棚から櫛を取り、それで彼女の長く艶やかな黒髪を梳き始めた。

「うにゅ……」

 途端、お空は気持ちよさそうな、眠そうな声を漏らす。彼女は、こうして髪を梳いてもらうのが好きなのだ。
 そしてそれは、する側の霖之助も同様だった。彼女の髪は、一見ボサボサで殆ど手入れがされていないように見えるが、しかし思いの他それは柔らかく、手触りが良かったのである。そして何より、世話好き(本人は否定しそうだが)の彼の事だ。こうして他人の世話を焼く事自体が、割かし好きなのであろう。

「うぅ……なんだか眠くなってきた……」

「やれやれ……少し無理をしてるんじゃないのか? 殆ど毎日、仕事が終わったら即此処に来てるんだろう?」

 それだけ慕われて、霖之助も悪い気はしない。が、だからといって彼女が無理をして身体を壊したりされても困るだろう。しかし、お空はそんな彼の言葉にううんと首を振る。

「そうだけど……でも、そうじゃないよ? おにぃさんに髪を梳いてもらうと、凄く気持ち良くて……眠く、  なってきちゃうの……」

 そう言っている合間にも、お空の頭を小さく揺れ初め、言葉も尻すぼみになって行く。……どうやら、本当に眠いようだ。しかし、彼女はまだ霖之助と話をしていたいらしく、眠気を吹き飛ばそうとブンブンと頭を振るっている。が、それも無駄な抵抗だ。

「……眠いのなら無理しなくて良い。仕事疲れもあるんだろう?」

「うにゅ……」

 もう殆ど限界だったのだろう。カクン、と首が落ちてそのままお空は穏やかな寝息を立て始めた。そんな彼女を、霖之助は半ば呆れ気味な、その一方で我が子を愛しむ親のように優しい目で見つめる。
 そして、

「……ふぁ」

 やがて、彼もまた次第に船を漕ぎ始めるのであった――





* * *





 ――カタン。

「んにゅ……?」

 小さく響いた物音でお空が目を覚ましたのは、もうすっかり夜の帳が落ちた頃であった。
 長年の地下暮らしのおかげか、鳥頭ではあっても鳥目ではない彼女だが、しかし明かりが僅かに差し込む月明かりだけ、という状況に、少し戸惑う。
 寝起き直後という事もあって今一状況を思い出せず、少しぼんやりした表情で周囲をきょろきょろと見渡しいると、

「んん……」

 ――ギュッ。

「ッ!!?」

 突然背後から、何者かに抱きつかれたのだ。
 完全に無警戒だった為に、傍目から見たら逆に吃驚してしまいそうなほどに、大きく肩を震わせるお空。その際に、彼女の大きな翼もぶわっと思わず広げてしまい、それらが近くの商品や棚に当たってしまう。

「……あ゛」

 そこでようやく、自分が何処にいるのかを思い出したようだ。
 まるで主に悪戯がばれた時のような――心が読める為に嘘も言い訳も通用しないのだ――絶望感溢れる表情を浮かべるお空。以前にも何度か、うっかり店の商品を壊してしまった事があるのだが……その際の事は、彼女にとっては軽くトラウマになっていたりするのだ。
 なもんで、恐る恐る背後――未だお空に抱きついたままの霖之助へと、視線を向けてみる。
 しかし、

「…………ぐぅ」

「……うにゅ?」

 彼は寝ていた。完膚なきまでに。
 そんな予想外の光景を、たっぷり三秒掛けて脳へと送り届けた結果、お空の思考は『わぁ、おにぃさんの寝顔結構可愛いなぁ』等という、割かしどうでも良い方向へと流されていた。どうやら、霖之助に怒られるものとばかり思っていたらしい――どんだけトラウマなんだ。
 それは兎も角、霖之助はお空の慌てっぷりを余所に、穏やかな寝息を立てている。恐らくは、未だにお空に抱きついたままなのも、寝惚けているが故なのだろう。

「…………どうしよぅ」

 寝惚けているとはいえ、霖之助に抱きつかれている。改めて理解したその事実が、お空の思考を沸騰させる。
 初めて出会った頃に色々あった結果、お空は霖之助に特別な感情を抱いていた。それは、そう呼ぶには些か幼いが……しかし、確かに彼女の中に存在する恋心=B毎日のように香霖堂を訪れているのも、本来ならその気になれば簡単に振り解ける彼の腕をそのままにしているのも、動因となっているのはその感情であった。

「うにゅ……」

 チラリ、とお空は霖之助の顔を見上げてみる。彼は、少女の困惑と葛藤などまるで気づいた様子もなく、未だにぐっすりだ。先程思わず翼を広げてしまった時も、幾つか物が落ちたりして(幸い壊れた物はないようだが)結構良い音がしたものだが、それにも気付かない辺りよっぽど熟睡しているのだろう。

(……今なら、悪戯してもばれないかな……?)

 その事が、自然と彼女を駆り立てる。気づけばお空は、ある一点を凝視していた。 (おにぃさんの此処が、あの時……)  そっと、霖之助のそれ――唇を指先で軽くなぞる。
 それはもう、大分前の事だ。
 二人が初めて会った際、お空はとある事情から香霖堂に泊まる事となった。その時、お空はちょっとした悪戯心から、霖之助の入っている真っ最中の風呂場に突撃したのである。まだ魔理沙が幼かった頃には、一緒に風呂に入った事もある霖之助だ。別に、子供に対して変な劣情を抱くような性癖は持ち合わせてはいない。
 しかし、確かにお空も子供ではあったがそれはあくまで精神的な意味で、だ。日頃の言動とは裏腹に、その身体つきは服の上からでもはっきりと解るほど、自己主張が強い。そんな彼女が裸で飛び込んできて、一部で朴念仁だの枯れてるだの言われている霖之助も、全くの無反応でいる事は出来なかった。
 ……というか、これで何もなかったのならば、それは最早枯れてるを通り越して単なる不能だ。
 それは兎も角、予想外の事態によって思わず理性のタガが外れ掛けた霖之助が、お空を押し倒す一歩手前まで行ってしまったのである。
 結局、ギリギリのところで踏み止まり、最悪の事態は防げたが……霖之助にとっては苦い記憶だ。

「…………ごく」

 無意識のうちに、お空は小さく喉を鳴らす。
 たしかにあの時、お空もいきなり豹変した霖之助に戸惑と僅かな恐怖を抱いたが、しかし結局のところそれが彼女の中にあった彼への好意を、幼くもしかし確かな恋心へと変化させる起爆剤となったのだ。 (起きてない……よね……?)  そっと、小さく震える自らの顔を彼へと近づけていくお空。自分がいったい何をしているのか、未だに良く解っていない彼女ではあったが、不思議とその動きは止まらなかった。
 そして――

「…………ん」

 そっと、重ねると言うよりも触れた、というくらい僅かに、お空は自分の唇を霖之助のそれへと重ねて、離した。

「…………ッ!?」

 途端、自分のしている事がようやく解ったかのように、ボッと顔を爆発させる。これ以上ないほどに高鳴る胸の鼓動と、じんわりと広がるこそばゆい感覚。
 一度味わってしまえば、もう抑える事は出来なかった。ちゅ、ちゅ、とまるで啄むように小刻みに重ねられる唇。次第にそれだけは物足りなくなり、チロ、と一度霖之助の唇をその小さな舌で舐め、そして、

「ん、んん……ッ」

 今度は一瞬では離れず、僅かに開いていた彼の口へと潜り込ませるように自らの舌を挿入した。

「んちゅ……ん」

「……? ……ッ!?」

 流石にそこまでされれば、霖之助も気づかない訳がなかった。自分の口を這いずり回るような感覚に、眉を顰めながら瞼を開いた彼の表情は、すぐに驚愕へと変わる。当然だ。目を覚ましたら、直ぐ目の前に良く見知った少女の顔がドアップであったのだから。
 寝起きと突然舞い降りた予想外な事態に、霖之助の頭がパーフェクトフリーズを起こしている間に、お空の方も彼が起きた事に気づく。

「んちゅ……あ、おにぃさん起きたの……?」

「あ、あぁ……」

 呆然としたままの霖之助を余所に、お空は顔を離す。その際にツーと掛かった銀の橋が、窓から差し込む月明かりを受けてキラキラと煌めく。普段の言動からは想像出来ない、艶めかしく蕩けた彼女の笑みと相まって、非常に淫靡な光景だ。

「これは一体……君は、何をして――」

 戸惑いながらも疑問の言葉を口にしようとした霖之助だが、しかしそれがすべて出る前に、お空によって塞がれてしまう。驚きの声を上げる間もなく、再び挿入される彼女の舌。反射的に、それを押し返そうとしたのが不味かった。

「はむ、ん……れる……」

 瞬く間に舌をお空のそれに絡み取られてしまい、結果として自らより深く繋がった形となる。
 当然の事ながらお空はこういった事に全く慣れていない。そもそも、知識自体あるのかすら定かではないのだが……。それは兎も角、経験のない彼女の舌技は稚拙そのものだ。ただ本能に従って、より深い快楽を得ようと我武者羅に動かされるだけ。しかしそれでも、未だ混乱から立ち直れきれていない霖之助の理性を削ぎ落としていくには、充分すぎるほどだった。

「ぷは――うむぅッ!?」

 経験が浅い為か、キスをしたままでは上手く呼吸出来なかったらしいお空が口を離した瞬間、しかし霖之助は逃がすまいというかの如く、彼女の後頭部を片手で抑え、そして強引に引き寄せた。
 さっきとは逆に、霖之助がお空の唇を奪う形だ。

「れる、んちゅ……んん!」

 歯茎を舐め、舌を絡ませあい、そして唾液を流し込む……。純粋な妖怪ほどではないものの、しかし人間を超える時間を生きてきた霖之助だ。その中にはこういった経験もあったのだろう。彼のそれはお空の比ではなく、そして既に場の主導権も彼へと移りつつあった。

「んん……ぷはッ。……うにゅ、おにぃさん、激しすぎだよぉ……」

「はは、済まないね……。でも、先にしてきたのは君の方だろう? この程度で根を上げてもらっちゃ困るな」

 そう、優しげな、しかし何処か狂気的なものを含んだ笑みを浮かべて、霖之助はそっとお空のスカートの中へと手を入れる。
 ニチャ……、と小さく水濁音が響いた。

「あ、んッ……!」

「やれやれ……キスだけでこんなに濡れているとはね。いやらしい娘だよ、君は」

「そ、そんなこと……うにゅッ」

 反論しようとしたお空を、下の方の口をシュッと布越しに一回、摩る事で黙らせる。その予想通りな彼女の反応に、霖之助は小さく口の端を吊り上げた。

「違う、とは言わせないよ? 君はいつだって僕を誘惑してきたんだからね。……これで」

 むにッ、と霖之助はお空の、メロンの如き豊かな膨らみへとスカートの中から抜いた右手を伸ばす。それはただ大きいだけではなく、霖之助が手に力を込めるたびに抵抗なく形を変えるほどに柔らかい。

「あ、あぁ、んッ!」

「一見子供のように無邪気な振る舞いの癖に、身体の方はこんなにイヤらしい……本当に困った娘だ」

 ククッ、と可笑しそうに喉を鳴らしながらも、霖之助は手の動きを緩めはしない。そのマシュマロのような柔らかい感触と、力が加えられるたびに溢れるお空の嬌声が、彼の興奮を更に高めていく。最初こそ予想外な霖之助の反応に、戸惑いの色を浮かべていたお空だが、しかし元々先に仕掛けたのは彼女の方だ。次第に彼女の中で戸惑いが消え、より快感を得たい、という欲求が強まっていく。

「んん……おにぃさぁん……」

「おや、どうしたんだい? そんなに切なそうな声を上げて」

 霖之助もお空の状態は解っているのだろう。あえて力を弱くして揉む事で、彼女を軽い焦らし状態にしているのだ。故に、口元には笑みを浮かべつつも解らない風を装って首を傾げる。

「も、もっとぉ……」

「『もっと』なんだい? ちゃんと言ってくれないと解らないな」

 『でも……』と、此処に至って恥ずかしがるお空に、霖之助は尚も弱くそして単調な愛撫を繰り返す。しかしそれでも、彼女はそれ以上口にはしない。焦らされ続けて、とっくに身体の昂りは限界だろうに。今頃になって働いた羞恥心もあるのだろうが、しかしそれ以上に、知識も経験もないが故になんと言えば良いのか解らないのだろう。
 そう察した霖之助は、『特別だぞ』と忠告し、そして、

「簡単だ。……ただお願いしすればいいんだよ」

「お、お願い……?」

「そう、『私を滅茶苦茶にしてください。イカせてください』……とね」

「そ、それは……ふぁッ」

「嫌なら別に構わないよ、ここで止めても。僕はこれだけでも充分満足だからね」

 それは嘘だ。
 寝起き直後という、男の生理現象が付きものな状態でこのような事になって、彼自身も既に痛いほどに昂っている。本当ならば今すぐにでも彼女の衣服を破り、彼女のいやらしい肢体を堪能したいところだが、彼の理性――ある意味で狂気ともいう――はその本能をなんとか抑えた。

 ――霊烏路空という女は、そのまま頂いてもさぞかし美味かろう……だが、そこにほんの少し手を加える事で、彼女の味はより極上のものとなるのだ。

 そんな事を考えているうちに、とうとうお空の方が限界に達したのだろう。たどたどしく、しかし半ば悲鳴に近い声で彼女は叫んだ。

「お、おにぃさん……わ、私をめ、滅茶苦茶にしてッ、イカせてぇぇぇえッ!」

 それは、霖之助が例として上げたものそのままの台詞。恐らくは意味もほとんど解らず叫んでいるのだろう。だが、霖之助にとってはそれで充分だった。

「良く出来たね」

「…………あ」

 一瞬、それまでとは打って変わった、普段浮かべるような優しげな笑みで彼女の頭を一撫でし、そして――

「望み通り、思う存分イかせてあげるよ」

 そう言うや否や、彼の手は素早くブラウスの前部分を肌蹴させ、彼女のはち切れそうな肉乳をそれまでとは比べ物にならない力で揉みしだき始めた。

「あ、ふぁッ!? あッ! んァッ!」

 よっぽど待ち望んでいたのだろう。ともすれば痛いくらいの刺激に、しかし彼女は歓喜の涙を零しながら身体を震わせる。

「あひィ!? なにこれ、凄いよォッ!?」

「まだだ、こんなもんじゃ終わらないよ」

 既に充分すぎるほどによがり狂うお空だったが、霖之助がその程度で終わる筈もない。手で揉んでいない方の胸へと顔を近づけ、そしてぷっくりと膨れ上がる桜色の頂きを口に含んだ。

「ひぅッ!?」

 ピン、とそそり立った突起を、舌で弾くようにして刺激する。同時に、右手の方でも人差し指と中指で乳首を挟み、上下に扱き始めた。女の急所を二箇所同時に刺激されて、思わずお空はその強すぎる快感に逃げ出そうと腰を引く。が、霖之助は左手を彼女の腰に回す事でそれを防いだ。

「おにぃさんダメぇぇ! それ、強すぎ、るよぉッ!」

 半ば悲鳴に近い彼女の言葉を、しかし霖之助は無視して尚も刺激を加えていく。舐め、転がし、押し潰す。そのたびにお空の身体は跳ね、口からは嬌声が溢れ出した。
 その様子を見て、そろそろ頃合か、と察した霖之助は一瞬刺激を与えるのを止め、そして、

 ――カリッ。

「ひ、な、なんか来るッ、キちゃうぅぅあぁぁァァァァッ!?」

 歯で乳首を甘噛みした途端、お空は今まで以上に大きく身体を震わせ、そして喉が枯れそうなほどの絶叫を迸らせた。
 どうやら、達したようだ。





「はひ、ひぁッ……」

 霖之助の胸元に寄り掛かり、ただ息絶え絶えと肩を揺らすお空。経験の乏しい彼女にとっては、絶頂の衝撃は相当に凄まじいものだったのだろう。だが、この程度で根を上げられては、霖之助にとってはよろしくない。彼自身はまだ、全然満足していないのだから。

「うにゅ……」

「ほら、何時までもへばってないで、今度は僕を満足させてくれないか?」

「……?」

 未だ放心状態で寄り掛かるお空を、半ば無理矢理引き剥がす。何を言っているのか解らず、キョトンと首を傾げる彼女に、霖之助は答えを指し示す。

「おにぃさんの……制御棒……?」

「…………妙な喩えをするね、君は」

 お空の発した言葉に一瞬、呆れたような表情を浮かべるものの、しかしそれをすぐに打ち消した。正直なところ、彼の方も冗談を言ってられるほどの余裕はないのだ。今も複雑でごっちゃとした服の上からでもなおはっきりと解るほどに屹立したそれを、霖之助は指を差して言う。

「僕が君にしたように、今度は君が僕を気持ちよくしてくれ」

「これ、を……」

 如何にも恥ずかしげに顔を林檎のよう紅潮させるも、しかし目線だけは霖之助のテントから決して離す事なく、あまつさえゴクリと生唾を飲み込む。
 どうやら、後一押しのようだ。

「……してくれるね?」

「う、ん……」

 ニッコリと、この場にそぐわないほど穏やかな彼の笑みに釣られるように、お空はコクンと小さく頷く。そして緊張からか小さくてを震わせつつも、うやうやしく彼のズボンを下ろした。

「うにゅッ!?」

 ぶるんッ、と勢い良くズボンの下から飛び出したそれに、お空は思わず短い悲鳴をあげる。恐らくはそれを生で見るのは初めてなのだろう。もしかしたら以前、霖之助の入っている風呂場に突撃した際にも見ているかもしれないが、どちらにせよ大差はないだろう。

「凄く、おっきぃ……。まるで、この前おにぃさんにもらったコーラの瓶みたい……」

「…………それは誉めてるのかい? それとも貶してるのかい? ……くッ!?」

「にゅッ!?」

 相変わらず素っ頓狂な喩えを繰り出すお空だが、その一方で既にその手は屹立する剛直へと伸びていた。知識としては持っていなくとも、本能でどうするべきなのか、朧気ながらにも解るのだろう。彼女の冷たくほっそりとした指が触れた途端、ビクンと大きく震える肉棒。それに驚いてお空は一瞬手を引っ込めるも、しかしすぐに再び手を伸ばした。

「熱い……おにぃさんのこれ、本当に制御棒みたいだよぉ……」

 順応性が高いのか、既にうっとりとした表情で剛直を弄り始めているお空。最初のキス同様、そこに技術などあったものではないが、しかし霖之助には凄まじい快感となって襲い掛かった。ジュプジュプ、と既に大量に溢れていた先走り汁が、お空の手の動きに合わせて水濁音を響き渡らせる。

「おにぃさん、気持ち、良い……ッ?」

「く、あぁ、良いぞ空……ッ!」

 一心不乱に剛直を扱くお空によって早々に霖之助は限界を感じていた。が、彼はそれを必死で我慢する。細かい事など気にせずそのまま出しても良いだろうが、しかし折角お空がしてくれているのだ。もう少し堪能したい、という気持ちがあった。そしてそれ以上に彼の男としての矜持が、簡単に果てる事を許さなかったのだ。
 そんな中、霖之助の中にある欲望が生まれる。

「そうだ空、胸で、してくれないか?」

「え? お、おっぱいで?」

 霖之助の突然の要望に、お空は思わず目を丸くする。そもそも手淫自体始めてなのだから、胸でするなど思いつきもしなかったのだろう。だが、想いを寄せる霖之助に気持ちよくなって欲しい、という感情が彼女を動かす。

「――これで、良いの……?」

「あぁ、これは……思っていた以上に凄まじい、なッ」

 霖之助のそれは、決して小さい部類のものではない。むしろ大きい方だろう。だが、それすらもすっぽりと埋め尽くすほど、お空の胸は大きかった。そして先程直接弄って解っていた事だが、柔らかさも尋常ではない。僅かに動かされるだけでも、霖之助の脳髄には電流が流れ、油断すればすぐさま果ててしまいそうだ。ずりゅ、ずりゅ、と肉房が上下に揺れるたび、霖之助の口から苦悶とも快感とも取れる吐息が溢れる。いい加減、彼も限界だった。
 そこへ――

「チロッ」

「――ッ!?」

 突如襲来する、それまでとは比べ物にならない快感。それは胸の谷間から僅かに覗いていた亀頭に、お空がその小さな舌を突き刺した事によるものであった。最も敏感な先端部への刺激に、霖之助には最早抗う力も気もなかった。ドピュッ、と地獄の焔の如き熱さを伴った白濁が、自分の胸へ顔を埋めるようにしていたお空へと直撃する。

「うにゅぅッ!?」

「く、うッ!」

 余程溜まっていたのか、反射的にお空が顔を離した後も肉棒は精液を吐き出し、シャワーのように自身の脚やお空の顔へと降り注ぐ。それが余程衝撃だったのか、射精が終わった後もお空は呆然と顔を白く染めたままであった。

「…………ッ」

 元々新雪のように白い肌が、更に白い――しかし清らかさとは無縁の代物に塗れている光景に、一度出したにも関わらず再び昂りつつあるのを、霖之助は感じる。
 そしてそれは、お空も同様のようだった。

「おにぃ、さん……」

 顔の精液を拭う事もほどほどに、トロンとした眼差しで霖之助の唇へと貪りつく。途端、咽返るような臭気が彼の鼻をつき、口の中に苦味が広がるが、不思議と気にはならなかった。
 既に二人は、完全に酔っているのだ。互いの味に、この空間に。




「――良いね?」

「……うん」

 ホーホー、と何処から梟の鳴き声が届く中、降り注ぐ月光が布団の上で仰向けになった少女の裸体を煌めかせる。そこに伸し掛るようにしている霖之助もまた、服を纏ってはいなかった。場所を寝室へと移した二人は生まれたままの姿となり、いよいよを持って繋がろうとしている。片や洪水のように蜜を溢れさせ、片や先程以上に己が分身をそそり立たせている。

「きて、おにぃさん……私と、フュージョンしましょう?」

 その言葉が、合図だった。クチュリと音を立てて肉棒と秘所が触れ合い、そして、


 ――ズプゥ。

「ひあぁぁぁあッ!?」

 一気に霖之助は剛直をお空の中へと沈めた。その衝撃で彼女が悲鳴にも似た声を上げるが、同時に身体が小刻みに震えている事から、どうやら軽く達したようだ。
 一方の霖之助も、タダでは済まなかった。辛うじて挿入だけでイッてしまうのは防いだが、しかし彼女の中は柔らかく霖之助に絡みつき、それでいてキュウキュウと締め付けてくる。気を抜けば、あっという間に果ててしまうだろう。だが、何時までもこのままでいる訳にも行かない。限界近くまで高まっていた射精感が落ち着くのを待って、霖之助は口を開いた。

「そろそろ、動いても良いね?」

「う、ん……気持ちよく、して? それでおにぃさんも、気持ちよくなって?」

 息絶え絶えといった様子で胸を上下に揺らしながらも、ニッコリと笑みを浮かべる。そんな姿を見て、我慢出来る筈がなかった。

「あ、あッ、んッ! は、ふあッ!」

 ジュプジュプ、パンパンッ、と愛液が掻き出される音と、互いの肌が触れ合う音が響き、そしてそれに負けじと少女の嬌声が木霊する。お空の方も、只されるがままではない。霖之助の首へと両腕を回し、唇へとむしゃぶりついて舌を絡ませる。そして腰も、次第に霖之助の動きに合わせるように降り始めた。その、布団の上で抱き合うようにしている体勢の為、お空の豊満な胸は霖之助の胸板に押し潰され、腰の動きに合わせてピンと勃った頂点も擦れる。それがまた、快感となって二人に送られた。

「くぅ、そろそろ、出るッ!」

「わ、私も、もう……ッ!」

 やがて、限界が近づき、ただでさえ激しかったピストン運動が更に、乱暴なほどになる。そしてより一層大きくなった水濁音や肌が打ち合う音が、数回響いた後――


「あ、あぁ、イく、イッちゃううぅぅぅうッ!」

「く、うアッ!」



 お空の腕がより強く霖之助を抱きしめると同時に、霖之助もまた熱い熱い奔流を迸らせた。ドピュ、ビュルルルッ、と既に一回射精しているにも関わず、膣内から溢れそうなほどの量だ。

「うにゅ、おにぃさんの熱いの、が、私の中に……」

 それを受け止めるお空の表情は蕩け切っていて、涙と涎でグシャグシャとなっていた。が、流石に体力の限界なのだろう。重たげに瞼を下ろし、そのまま寝息を立て始めた。そして、霖之助も。
 霖之助の意識が途絶えるその刹那、彼の視界の隅に、誰かが映ったような気がした――





* * *




「……………………やってしまった」

 目覚めて開口一番に、霖之助は某隙間妖怪を怒らせた時にも勝る、絶望に溢れた重々しい声でそう呟いた。何の事かは、言うまでもない。先にしてきたのは彼女の方とはいえ、最終的に本番までしてしまったのは紛れもなく彼自身の所為であろう。これは、色々と覚悟しなければならない。主に命的な意味で。

(それは兎も角……)

 まずすべきはお空に謝る事だろう、と霖之助は思い起き上がる。以前風呂での件でも似たような事にはなったが、しかし当然ながら今回はその時とは比べものにならないほど、霖之助の気は重い。眠った時は同じ布団だったにも関わらず、霖之助が起きた時には既に彼女の姿はなかった。出て行ってしまったのかもしれない。それでも、何だかんだで生真面目な彼は何と謝ろうか、と考えながら廊下を進む。そして居間への襖を開けると――


「あ、おにぃさんおはようッ!」



 何時にも増して快活な少女の声が響き渡った。

「あ、あぁ……おはよう」

 ビシッ、と居間の中央で似合わないほどに綺麗な正座をしているお空に、思わず霖之助さんシャットダウン。再起動まで少し時間が掛かるようです。
 しかしお空はそんな彼の様子など気にした様子もなく、むしろ今こそが好機とばかりに口を開いた。


「ふ、ふつつかものですがッ、よろしくお願いしますッ!」



 そして深々とお辞儀。と同時に霖之助再起動完了。でもまたなんか強制終了喰らいそうです! しかし――

(…………それも良いかもしれないな)

 なんて心の片隅で思っている自分も、いたとかいないとか。そんな彼に、お空はにぱっ、と笑い掛ける。それは、霖之助が知っている中でも最高に幸せそうな、まさに太陽のような笑顔であった――





























〜 おまけ 〜


「…………ところで、アレは一体何処で覚えたんだ?」

「うにゅ? アレって?」

「『不束者ですが〜』って奴だ」

「あー、あれもお燐に教えてもらったんだよー。好きな殿方と一緒になる時に言う言葉だって」

「…………ほぉ」

 その後、お燐≠ニやらと本格的に話をしなければならないと感じた霖之助は、何とかお空に会わせてくれるよう頼んだが……お空が妙に不機嫌になるので、未だ会う事は叶わないらしい。



















◆後書き◆

そしてお空は孕む

執筆:2009/12/24
掲載:2010/3/7











inserted by FC2 system