【猫みたいな君】










「――へぇ、こんなのも置いてあるの」

「……一応言っておくが、僕の趣味ではないぞ?」

 何処か嘲るような、それでいて微かに興味深そうな表情を浮かべながら比那名居天子が眺めているのは、一つの青いヘアバンドであった。と言っても、ただのヘアバンドではない。名称は猫耳バンド=B用途は猫になる≠ニいう外の世界の代物だ。彼女が立っている辺りには、似たような品が幾つも箱に入っている。

「ふぅん……。ま、そういう事にしておきましょうか」

 明らかに信じていないような彼女の返事に、僕はそっと息を吐く。暫くは彼女の言いたいように言わせてやろう。どうせすぐに飽きる。そう思って、改めて視線を彼女に向けてみると……何故か彼女は、その猫耳バンドを付けていた。

「…………何してるんだ?」

「んー? 折角だし付けてみるのも面白いかな、って。どう? 似合う?」

「…………はぁ」

 愉しげにそう聞いてくる彼女に、僕はもう一度息を零す。……確かに、似合ってないなんて事はなかった。丁度猫耳バンドの色が彼女の髪と同じという事もあったし、そもそも彼女自身が何処となく猫っぽい性格をしていたからかもしれない。
 そんな僕の反応をどう思ったのか、天子はますます笑みを深くした。

「ふふ、ご満悦みたいね。……霖之助って、猫好きだっけ?」

「好きか嫌いかで言えば好きだよ、猫は」

「まるで私はどうでも良い、みたいな言い方ねェ」

「君の事も好きだよ、とでも言ってほしいのかい?」

 さてねェ、と意地の悪い笑みを浮かべながら、彼女はひょこひょこと僕の方へと近づいてくる。気にいったのか、猫耳バンドは未だ付けたままだ。そうして彼女は、何故かぽすんと僕の膝の上に収まる。

「……何してるんだい?」

「あら、猫は飼い主の膝の上で丸くなるものでしょう? ついでに『にゃー』と鳴いてあげましょうか?」

 そう得意気に目を細めながら僕の胸にしなだれかかってくる様は、確かに猫のように見えなくもない。……やれやれ、随分と大きな猫だこと。顎を撫でたらごろごろと鳴くのかな。そんな事を思って実際に試してみたら、くすぐったいと言われてしまった。それでも離れない辺り、満更でもないという事だろうか?

「……ふふ、霖之助ってやっぱり猫好きみたいね」

「……そうだね。でも、君だからかもしれないよ?」

「……む」

 言われっぱなしも癪なので、そう言い返してやると案の定、天子は頬を染めて恥ずかしそうに僕から目を逸らした。その仕草が、僕の頬を緩ませる。そしてそんな僕の反応に、彼女は何処か不服そうに頬を膨らませていた。

「……相変わらず、口だけは達者ね」

「商売人だからね。リップサービスは得意さ」

 何よそれ、と彼女は小さく笑いながら、再び僕の胸に身体を預けてきた。少女らしい柔らかな感触と、僕のすぐ鼻先にある彼女の髪から微かに香る桃の香りに、自然と僕の動悸が高まって行く。それを察したのか、天子は未だ頬を染めながらも、何処か蠱惑的な眼差しで、僕を見上げてきた。

「……ふふ、もしかしてシたくなってきちゃった?」

「人を盛りの付いた猫みたいに言わないでくれ」

「今猫なのは私の方なのにね」

 上手い事言ったつもりか、などという暇もなく、天子は僕の首に腕を回してきた。自然と、彼女の顔を間近に眺める事となる。以前なら何とも思わなかっただろうが、こんな状況ではどうしても意識せざるを得なかった。ぷっくりとしていて如何にも柔らかそうな桃色の唇から、視線を外す事が出来ない。

「……待ちきれない感じかしら?」

「何の、話かな?」

「ふふ、強がったって駄目よ?」

 ニヤリ、と目を細めて笑うその表情は、猫と云うよりも寧ろ女豹の如し。見掛けは幼い少女とはいえ、それは意外にも中々様になっていて……僕は自然と、小さく息を呑んだ。それを見て、彼女はまた小さく笑う。

「口よりも身体の方が正直みたいね。……ほら」

「ッ!」

 そっと、彼女は片手を僕のそれに伸ばした。思わず身体が小さく震える。

「霖之助の、硬くなってきてるわよ? もしかして猫耳な私見て興奮してた?」

「そん……ッ!」

 そんな訳ないだろう、と返そうとするも、それに合わせて彼女がキュッと僕のを軽く握ってくる。その刺激に、身体がビクンと震えてしまい、言葉も最後まで出す事は叶わなかった。見れば、彼女は何時もの嫌味な笑みを浮かべて僕を見上げている。何とか反撃の糸口を探そうとするも、彼女とてそう簡単に主導権を渡してくれるほど抜けてはいない。的確に刺激を送ってきて、僕に考える暇を与えてはくれなかった。

「く、う……ッ!」

「ふふ、普段の澄ました顔が嘘みたいに可愛いわねェ……」

 天子自身も興奮してきたのか、サディスティックな笑みの中に蕩けたものが混ざり始める。それはいやに淫靡で……それを見ていると、徐々に僕の中で歯車がずれて行くような感覚が襲ってきた。これ以上はいけない、と思いつつも僕は不思議と彼女を引き剥がす事は出来なかった。寧ろ、

「んん……ッ!?」

 彼女の腰手をまわしてぐっと引きよせ、彼女の唇へと自分のそれを重ねる。予想通りそれはとても柔らかく、温かい。思わず、腕に力を込めてより強く重ね合わせる。一瞬何が起こったのか理解出来ず、目を丸くしていた彼女も、すぐに肩の力を抜き始めた。

「ん……ぷはッ」

 そして数秒か、或いは数分が経ってようやく僕らは唇を離す。つー、と薄く伸びる銀の端の向こうでは、天子が顔を林檎より尚赤く染めつつも、しかし嬉しそうに笑みを形作っている。まるで、それを待っていたと言わんばかりの表情。

「ふふ、やっぱり霖之助もシたかったんじゃない……」

 その言葉を、僕は否定する事が出来なかった。現に、今だってそっと服の中に潜り込んできた彼女の手を、振り払う事が出来ないのだから。そして……彼女の細く足冷たい指が、僕の熱く昂ったそれに触れる。

「……くッ!」

「ぴくん、ってなった……可愛いッ」

 自分以外の者の指が触れた刺激に思わず小さく呻く。小さく、といってもこの距離だ。当然天子の耳にも届いており、それを聞いた彼女はますます笑みを深くし、今度は軽く握ってすら来た。

「何時までもズボンの中じゃあ窮屈でしょう? 今出してあげるわね?」

 そしてそのまま、もう片方の手で僕のズボンを器用に下ろしてしまう。途端、ブルンと既に充分なほどに高まっていた剛直が屹立した。その様に、天子も自分でやっておきながら目を丸くしている。だが、それも一瞬の事で、

「ふふ、おっきぃ……んちゅ」

「ッ!」

 すぐに表情を蕩けさせて、ちろり、と……それこそ、まるで猫がミルクを飲むように、剛直の先端に舌を伸ばし、既に滲み始めていた先走り液をぴちゃぴちゃと舐め取り始めた。最も敏感なその先端部に、柔らかく生温かい感触が触れる度に、思わず腰が浮かび上がりそうな強烈な刺激が走る。

「ちゅ、ん……気持ち、良い……?」

「……ッ!」

 得意気に見上げられた彼女の表情に、また僕の腰にゾクリとした感覚が走る。状況としては僕が一方的に彼女に翻弄されているのに、傍から見ればきっと年端もいかない少女に奉仕させる外道に映るだろう。そんな自分の滑稽さと背徳感が入り混じって、高まって行く。最早僕には、目の前の少女を振り払おうなどという意思は欠片も残っていなかった。ただただ、快楽の海へと思考は溶けて行く。それでも僅かに残った男としての矜持が、最後の防波堤となって彼女の成すがままという状況に抗おうとする。長くは持たないだろうが。

「ふ、く……ぅッ」

「ふふ、ん……我慢なんかしないで射精したいならすれば良いのに……ちゅ」

 必死で射精感に堪える僕を嘲笑うかのように、天子は徐々に責めを強くしていく。先端やカリといった特に敏感な部分を中心に舌を這わせ、一方でその細く少しひんやりとした指で根元を扱いていた。彼女の口から垂れた唾液と先走り液が潤滑油となり、ぬちゃぬちゃと濁った音を奏でていく。その手コキだけでも、自分でするのとは比べ物にならないほどの凶悪な刺激だ。少しでも気を抜けば、途端に限界に達してしまうだろう。

「必死に我慢してる霖之助の顔も可愛い……もっと虐めたくなっちゃうくらいに」

「なに、を……く、あッ!?」

 僕が問い返すよりも早く、彼女は既に限界近くまで昂っている怒張を、あろう事かその口に含み始めたのだ。小さな口では僕のを全て呑み込む事は出来ないようだが、逆にその狭さ故に強烈な快感が僕に襲いかかる。これで射精を免れたのは奇跡と言って良いだろう。

「ん、ふ……うッ!」

 一息吐く間もなく、彼女は再び動き始める。ずちゅ、ずちゅ、彼女の頭が上下に揺れる度に水濁音が辺りに響き、僕の身体が小さく震える。怒張の上半分程しか咥えられていないが為に、彼女の柔らかな唇が丁度カリ部分を擦って堪らない。その上で、更に舌が巧みな動きで亀頭を刺激してくるのだから、元より近かった限界へと一気に駆け上がる。
 そんな僕の状態を既に見切っているのであろう。天子はまるで『良いわよ』と言わんばかりの視線を、僕へと向けてくる。そして、同時に止めと言わんばかりに強く吸い始めた。

「く、射精る……ッ!」

「んぐ……ッ!」

 どぴゅ、どぴゅるるッ! 既に殆ど限界であった僕がそれに耐えられる筈もなく、僕はその白濁の欲望を、一気に放出した。その、まるで溶岩の如き奔流を、しかし天子は顔を離す事無く受け止める。流石に全てを受け止めきれはしないのだろう。涙の浮かんだ瞳を苦しげに歪め、勢い余って溢れた精液を口の端から垂らしながらも尚受け止め続けるその様は、淫靡よりも寧ろ健気さが強調され、こんな場面にも拘らず……少し、見惚れてしまった。

「ん、んん……ふぅ……?」

 暫くモゴモゴと口を動かし、そして口の中のそれを呑み込んだらしい彼女は、僕の視線に気づいたらしく不思議そうに首を傾げた。それは、今し方まで行っていた行為からはとても想像出来ないほどに、無邪気なものだ。しかし、それもすぐに移り変わる。

「うげェ……苦い……」

 それまでの雰囲気を一瞬でぶち壊して、彼女はおェっと一つ息を吐いた。当然の反応といえばそうなのだろうが、それでも僕は小さく肩を竦めてしまう。そんな僕に、彼女はすぐに表情を改めて、あの意地の悪い笑みをまた浮かべ始めた。

「それにしてもいっぱい出したわね……溜まってたの?」

「さて、ね……それより、終わったなら退いてほしいんだが?」

「あら、あれで終わりな訳ないでしょう?」

 まるで僕に圧し掛かるようにして、天子は笑みを深くする。まるで今から取って食われる獲物の気分だ。いや、その表現は強ち間違いじゃないのだろうけど。

「貴方ばかり気持ち良くなってちゃ不公平でしょう? 今度は私を、ね……?」

 そういって彼女は、そっとスカートを捲り始めた。普段は長いスカートとブーツで隠れて見えない白い脚が、あっさりと僕の視界に入って来る。そこには、既に幾つもの滴が垂れ落ちて、気づけば床に染みを作っていた。

「あ、またおっきくなってきた……!」

 はしたない、と頭の片隅で思うものの、しかし一方で僕の視線は彼女の脚から目を背ける事が出来ず、既に一度射精した筈の肉棒にもまた血が集まり始めていた。どうやら、意思と身体は別物らしい。……だから、今こうして彼女の中への期待に剛直が小さく震えているのも、決して僕の本意ではないのだ。あぁ、そうだとも。

「ふふ、意地張っちゃって……んんッ!」

 クチュリ、と僕の剛直と彼女の秘所が触れ合って、小さな水音が響く。と、その直後天子は躊躇う事無く、ズン、と重力に身を任せて一気に腰を下ろした。既に充分過ぎるほどに濡れていたそこは、先程と同等以上に昂っていた怒張をも、すんなりと最奥へと導く。

「く、かは……ッ!」

「う……くッ」

 快感、というには余りにも強烈な衝撃。僕は無論、自ら挿入した彼女もまた、背が折れんばかりに仰け反らせて目を見開いていた。先に一回出していなければ、これで達していたのは間違いないだろう。

「あ、は……霖之助の、ん……ッ、凄く大きい……!」

 しかし殆ど休む間もなく、天子は上下に腰を動かし始める。途端、じゅぷじゅぷと濁った音が激しく響き始めた。彼女の中はとろとろと柔らかく、しかしそれでいてやたらときついのだから堪らない。しかしそんな僕の状態を気にした様子もなく、寧ろするだけの余裕もないのか、天子の動きは更に激しさを増して行く。

「ふッ! は、ん……!」

 コツン、コツン、と天子が腰を下ろす度、怒張の先端が彼女の最奥をノックする。その都度、彼女は喉の奥から激しく嬌声を零し、それがまた僕の興奮を誘う。気づけば、僕自身も彼女のリズムに合わせるようにして腰を突き上げ始めていた。

「ふぁ、あ、あぁ! あん、はあッ!」

 パンパン、と互いの皮膚が触れ合う音が激しく響き、それに負けないくらい甲高く発せられる彼女の嬌声は徐々に切羽詰まったものへと変わって行く。限界が近いのだろう。それは僕も同様であり、自然と腰の動きも速まって行く。

「ふぁ、んちゅ……んッ!」

「ん、ふ、ん……ッ!」

 やがて彼女は、まるで僕に縋るように首に腕を回し、快感とも苦悶とも取れる声を上げているだけの、半開きとなった僕の口へと貪りつく。途端激しく絡み合う互いの舌。口と口の隙間から唾液が飛び、下からも目の前からもずちゅずちゅ、じゅるる、と濁った音が耳に届く。そして、じゅるるるッ、と僕が一際強く彼女の口の中を吸うと同時に、

「ふぁ……あ、あぁぁぁぁぁぁぁあッ!!」

「くぁ……ッ、射精るッ!」

 ビクン、と彼女はキスを続けるのももままならないほどに、それこそ挿入時以上に背を仰け反らせ、そして同時に膣が今までにないほど強烈に僕を締め付けてきた。それは僕を限界へと導くには充分過ぎるほどの刺激。最早抑える事の叶わない圧倒的な欲望の奔流が、一気に彼女の中へと解き放たれた。

「はぁぁ……あぁ、あぁっ……熱いィ……!」

「う、あ……ッ!」

 どぴゅるるるるッ! とまるで火山の爆発の如き勢いで己が内に放たれるその欲望に、天子は何処か恍惚とした表情で小さく身体を震えさせる。その緩み切った表情とは裏腹に、彼女の中は未だに強烈に僕を締め付ける。その様はまるで、一滴たりとも逃さない、といっているかのようだ。

「……あ、ふぅ……霖之助のが、いっぱぁい……」

 暫くして、そう嬉しそうに己の腹部に手を当てながら、彼女はようやく僕の上から退く。それを、僕はただ荒い息を吐きながら眺めていた――





* * *




「やれやれ……酷い目にあった……」

 カポーン、と小説だったならば表現されるだろう風呂場にて、僕は肩までしっかりと湯に浸かりながら、深く胸の奥底から絞り出すように息を吐く。実際、身体の方は下手な運動をした時よりもずっと疲れていた。

「なによー、霖之助だって何だかんだで楽しんでたじゃない」

 しかしそんな僕に、やはり湯船に浸かる天子は何処か不満そうに、それでいて少し楽しそうに言葉を返す。まぁ確かに、否定出来ない所が少しくらいは思い当たるけど……。

「踊る阿呆と踊らぬ阿呆。この世は結局楽しんだ奴が勝ちなのよ。……だから難しく考えず、ね?」

 そう言いながら彼女は、また僕のそれをそっと手で撫でてくる。湯に浸かってるが故の火照った身体と、そこから滴り落ちる幾つもの滴が、いやに艶めかしい。

「……まだ、物足りないのか?」

「あら、物足りなく思ってたのは貴方の方じゃなくて? まだまだ元気一杯みたいよ?」

「それは……んッ」

 問答無用で唇を塞がれてしまう。……やれやれ、まだ休むには少し早いらしいな――



















◆後書き◆

 途中から猫耳全く関係なかったね。こまけェこt(ry
 因みに猫って雌の方に恋愛の決定権があるらしいね。だからどーした。

 ……しかし、特に深い意味も展開もなくただ只管にイチャネチョしてるだけの天霖を 書きたいと思い続けて、気づけば既に二年近くが経ってました。ようやく書けた……の かな?

 最近逆レイプ的なのがお気に入りなので、話の内容もそんな感じに。次回は霖之助さ んのターンです。次回があればなッ!

 天霖は俺の有頂天!

2010/5/29:執筆
2010/6/15:掲載











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